胃の中は、胃酸があるために細菌は生きることができないとされていましたが、オーストラ
リアの医師が胃の中に細菌がいることを発見してから注目されるようになりました。その細菌がヘリコバクター・ピロリという細菌です。一般にはピロリ菌とも
呼ばれています。この細菌は強いアルカリ性のアンモニアという物質を産制します。胃酸は強い酸性の塩酸です。ピロリ菌自身は塩酸を自身が出すアンモニアで
中和しながら生きています。またアンモニアは組織に対しては強い毒にもなります。従って、急激に胃痛を起こしたり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発を頻回に繰
り返したり、といろいろ悪さをします。
幸か不幸か、このピロリ菌は消化管の中にだけしかいないようです。ピロリ菌で肺炎になったりする事はありません。
日本人の大人では70〜80%の人がピロリ菌を持っています。胃潰瘍や十二指腸潰瘍を何回もくりかえす人は内視鏡検査時に組織をとってその中にピロリ菌が
いるかどうかを簡単に調べることができます。迅速ウレアーゼテストという方法です。ピロリ菌が出すアンモニアで試薬が赤く変色します。ピロリ菌がいなけれ
ば黄色のまま変わりません。
ピロリ菌陽性
ピロリ菌陰性
潰瘍を繰り返す人でピロリ菌が陽性の場合は”除菌療法”を受けることができます。除菌療法を受けた人の80%は完全に除菌できますが、残念ながら残り
20%の人はピロリ菌が消えません。消えなかったら別の組み合わせの薬で再除菌をします。再除菌でほとんどピロリ菌は消えますが、全体の5%くらいの人は消えません。除菌しただけではピロリ菌が消滅しているかどうかはわかりません。その後に必ずピロリ菌が消えたかどうかを調べておかなければなりません。
ピロリ菌の検査は、胃カメラを飲まないでもできる方法はあります。糞便中のピロリ菌を調べる方法、特殊な薬を服用した後に、出てくるくる呼気中のアンモニ
アを調べる方法等です。しかし、これらの方法はピロリ菌があるかないかを調べるには楽でいい方法ですが、潰瘍の状態や胃炎の程度を調べることはできませ
ん。
胃ガンとの関連性
ピロリ菌が胃ガンの発生に大いに関係があるということが明らかになってきました。ピロリ菌がいることが明らかになった場合は除菌することが勧められています。従来は胃潰瘍か十二指腸潰瘍が無ければ保険治療が適用されませんでしたが現在は萎縮性胃炎でも適応になりました。将来、胃ガンにならないためには除菌をしておくことが推奨されています。ただし、除菌後も胃に負担がかからにような食事を心がけないと除菌後胃炎が持続することになります。