左の写真は18歳の男子で初診時の大腸内視鏡写真です。10歳代後半で発症する場合がほとんどです。全体にただれており、出血しやすい状態になっていま
す。内視鏡で擦れたところは出血します。
このように初診時にはたいてい、炎症が強い時期なので、下剤をかけなくても便はほとんど付着しておらず、粘膜がよく見えて、診断することが出来 る場合が多いです。
左の写真は発症後約15年目の症例です。症状もなく、緩解した状態です。血管が見えている部分が、潰瘍が治った部分で、ポリープの様に見える部分が元々の
粘
膜が残った部分です。偽ポリープといます。約15年の間に何回もひどい潰瘍になったり、症状が無くなったりを繰り返しています。
完全に治癒することが無く、症状を何回も繰り返す場合がほとんどです。胃潰瘍の場合は治ったら治癒と言いますが潰瘍性大腸炎では緩解と言います。再発した場合は再燃と言います。
左の写真は発症後約40年間一度も緩解したことが無い症例です。ひどく出血したときだけしか治療を受けません。腸管壁は弾力性が全く無くなって
おり、粘血
を混じた水様便しか出ません。
罹患範囲
潰瘍性大腸炎は罹患範囲から上図の様に三つの型に分けられます。直腸炎型は罹患範囲は小さいですが、便意を感じるセンサーがある直腸に炎症があ る た めに、常に便意を感じて、トイレに座っている時間も長くなり、結構きつい症状が見られます。粘血便も多いことがあります。左側型の場合もほぼ同様です。全 結腸型の場合は、直腸の炎症はあまりひどくないこともあります。
症状はどの場合も腹痛と粘血便です。
臨床経過
慢性持続型は症状は良くなったり悪くなった りの波はありますが炎症が無くなることがありません。腹痛は無くても粘血便は常に見られます。全体の10%弱の症例がこのタイプです。
初回発作型は一回の発病で緩解の状態がずっ と持続して、治癒してしまう場合があります。このタイプは全体の20%弱ですが、再燃もありま すから、最低でも2〜3年は厳重に経過観察しておく必要があります。
急性電撃型は急激に憎悪して、炎症が腸管壁 の全層にお よび、大腸は著しく拡張して穿孔する事もあります。救急で手術を要する場合がありますが、多くは人工肛門を造設して全身状態が改善してから大腸全摘になる ことがあります。
臨床的重症度
以下の表の様になります。
重症 |
中等症 |
軽症 |
|
排便回数 |
6回以上 |
重傷・軽症の中間 |
4回以下 |
血便 |
(+++) |
重傷・軽症の中間 |
(+)〜(−) |
発熱 |
37.5C以上 |
重傷・軽症の中間 |
なし |
頻脈 |
90/分以上 |
重傷・軽症の中間 |
なし |
貧血 |
Hb10g/dl以下 |
重傷・軽症の中間 |
なし |
赤沈 |
30mm/h以上 |
重傷・軽症の中間 |
正常 |
治療
殆どの症例は内服薬や経肛門的な薬物治療で緩解します。出血が止まらない様な重傷例や頻回に再燃を繰り返し、入院が再々必要な場合は手術 になりま す。
手術は大腸を全摘します。骨盤内に小腸で嚢を造り、肛門と吻合します(肛門温存)。肛門との吻合が不可能な場合は小腸での人工肛門となり ます。人工 肛門になっても、普通に生活も仕事も可能になります。むしろ、病気からは完全に解放されて日常生活はたいへん楽になります。