突然かなり激しい腹痛が起こります。就寝中に突然の激しい腹痛で目が覚めることもあります。その直後に激しい下痢があり、赤みの強い血液を含んだ下痢便が
でます。ピンク色のこともあります。
写真は発症してから8時間位してから来院しました(深夜に発症して、早朝に来院)。下行結腸に、広範囲に強い浮腫が有り、縦長に粘膜のビランと出
血が見られます。
腹痛はかなり激しく、15分から20分くらいは持続します。冷汗がでて、身動きも出来ないくらい強い痛みです。
この症例は発症後約半日経った症例です。前日の夕食後に発症して、翌朝に来院しました。縦長に潰瘍を形成しています。
この症例は発症後約半日以上経った症例です。注腸透視で見ると強い浮腫で粘膜の凹凸がかなり強く描出されます。ちょうど粘土を拇指でいくつも押した時のよ
うに見えます。そのためにレントゲンでは拇指圧痕像と言います。虚血性大腸炎の特徴的な所見です。
上で述べた症例は全て一過性虚血性大腸炎です。病変は多くは粘膜内にとどまります。原因は風邪ひきの腸炎でも、おなかを冷やしすぎたりしたときにも起
こります。年齢はあまり関係ありませ
ん。若い人も、お年寄りも起こります。腸管の強い収縮が持続しておこり、粘膜面の血流が一時的に途絶えるために起こるものです。
丸一日するとたいていは腹痛は無くなります。2週間くらいで潰瘍は殆ど上皮化が起こります。1ヶ月でほぼ完治します。特別な薬はありません。最初の 数日間は点滴注射が必要な場合もあります。消化の良いものを少量ずつ食べて安静にしておきます。
腸管の動脈の血栓形成などでおこる虚血性大腸炎もありますが、この場合は腸管の全層が壊死になりますので手術をしても致命的な場合が多いです。
一過性虚血性大腸炎の頻度は結構多く、当院では年間20例以上あります。季節的な差はありません。
腸管壁の全層が壊死になるような壊死型虚血性大腸炎は極めてまれです。